METHOD
育成メソッド

Technical Skils

「動作学習」+「実践的適応」+「高強度適応」+「環境適応」

選手によって、足の長さや筋肉の状態、神経系の発達状況は大きく異なります。 最終的には、どんな蹴り方であっても「狙った場所に正確にボールを飛ばせる」ことができれば問題ないように思えるかもしれません。
しかし、生物として個体差がある以上、すべての選手に共通する“完璧な蹴り方”というものは存在しません。 それにもかかわらず、私たちが細部の技術指導を重視するのは、「学習の合理化」を図るためです。

経験の積み重ねによって、自分なりに確立した蹴り方がある選手もいます。そうした選手は、自分のやり方に大きな問題を感じていないかもしれません。
しかし、その蹴り方が本人の気付かぬうちに受傷リスクを高める「代償動作」を伴っていた場合、どうなるでしょうか。

その選手は、どのようにして自分にとって適切ではない身体の使い方に気付くことができるのでしょうか。

従来の方法では、そこに大きな機会損失が生じていると感じています。ユース年代で多くのプレー経験を積んできた優秀な選手であっても、ゴール前のフリーの場面でシュートを外す光景をよく見かけます。もちろん、それが単なる技術エラーで片付けられないこともあります。
なぜ、多くの実戦経験を通して適応力を高めてきたはずの選手が、肝心な場面でエラーを起こすのか。その背景には、そもそも合理的な運動の「土台」を学ばないまま技術を積み上げてきたことが関係していると考えます。 強度の高い状況下では姿勢制御が難しくなり、結果としてキックの質が低下する。そうなっては、高校年代以降のレベルには対応できなくなってしまいます。

だからこそ、まずは運動自体を科学的に捉え、トレーニングによって“安全性”と“精度”の土台を築くことが重要だと考えています。




Tactical knowledge

戦術理解および判断力の育成において、私たちは「3つのフレーム」を軸に指導を行っています。

判断とは「選択すること」です。もちろん、自ら考える姿勢は重要ですが、日常生活と同様に、専門的な知識や判断基準を学び、それを基盤として判断を下すことが求められます。
そのため、私たちは選手に対して、判断の「精度」「速度」、そして「強度」を徹底的に指導します。
判断強度とは、判断の質と速度を試合の最初から最後まで継続して維持する力を指します。

プロの現場では、「勝つこと」が最大の目標であるため、選手に“必殺技”(=セットピース)のような決まりごとを用意し、それを徹底して遂行させることがあります。それはある局面での成功率を高める合理的な手段として機能します。 しかし、私たちが取り組むのはあくまで育成であり、そのアプローチを単純に模倣することには大きな落とし穴があります。

育成年代において“セットピース”を用意してしまうと、選手はそれを正解として反復し続けるようになります。その結果、選手の中での判断プロセスは停止し、単に決められた動きをなぞるだけになってしまいます。
つまり、「考えること」が置き去りにされ、判断力が育たないままになります。

もちろん、“セットピース”を学ぶことも一定の意味を持ちますが、優先されるべきは、汎用性のある原則を学習することです。
試合では、試合展開・疲労度・相手との接触・ピッチコンディションなど、多くの関係因子が複雑に絡み合い、毎回異なる状況が生まれます。原則を学び、その原則に基づき、適切に(精度)素早く(速度)、かつ持続的(強度)に”判断”を下すことができる必要があります。

このため私たちはまず、戦術の原理原則から指導を始め、プレーモデル・ゲームモデル・ゲームプラン・ゲームリーディングなどの理論を段階的に学ばせていきます。
加えて、指導のスコープも個人戦術 → ユニット戦術 → グループ戦術 → チーム戦術へと段階的に広げていきます。

試合では、練習通りにプレーすること自体が難しいからこそ、状況適応力を向上させることが極めて重要です。最終的には、どんな想定外の状況であっても、選手自身がその場で自律的に判断し、実行できる能力を身につけることがゴールです。

戦術理解とは、単なる知識の習得ではなく、実戦における選択の質を高めるための準備です。すべては「選手が自分で決められるようになる」ために行っているのです。




Mental strength and stability

プロの世界では、常に大勢の観衆の前でハイパフォーマンスを発揮し続けることが求められます。トップレベルの選手たちも「緊張」することはありますが、その感情によってパフォーマンスが著しく落ちることはほとんどありません。 これは、生まれ持った才能だけではなく、明確なメンタルトレーニングと経験の積み重ねによって獲得された「心理的なスキル」によるものです。

一方で日本では、これらの能力を「根性論」や「厳しい指導に耐えることで自然に身につく」と捉える傾向が依然として根強く残っています。しかし、現代ではこうした能力も科学的なアプローチによって体系的に習得可能であることが明らかになっています。

ユーロフットボールアカデミーでは、選手が常に適切な心理状態でプレーできるよう、「メンタルの安定」「ストレス耐性」「問題解決スキル」の3点を中心に心理的な指導を行っています。

具体的には、選手の心理状態を「興奮しすぎた状態(=over)」と「自信を失い集中力が欠けている状態(=under)」に分類し、それぞれの状態に応じて自分を「最適ゾーン(optimal zone)」に戻すための行動や思考のコントロール方法を指導します。呼吸の整え方や自己対話、視点の切り替えといった具体的なスキルを習得させています。

また、あえて選手に対して「今回は強いストレスをかける練習である」と事前に伝えたうえで、意図的に負荷をかけるトレーニングも導入しています。これは、試合本番のような極度の緊張状態でもパフォーマンスを発揮できる心理的な耐性を育てるためです。

さらに、単にストレスに耐えるのではなく、ストレスの「正体」を言語化して理解し、対応方法を明確にするトレーニングにも取り組んでいます。多くのストレスは、原因や実態が不明確なことで膨らみます。 そのため、何がストレスとなっているのかを自分の中で明確に捉え、それに対する具体的な対処法を学ぶ「自己内フィードバックの循環機能」を構築することを目指しています。

ユーロが展開する「創造的で組織的なフットボール」においては、試合前に大声で鼓舞したり、試合中に相手を威嚇したり、審判にプレッシャーをかけて主導権を握ろうとするようなプレースタイルは適しません。むしろ、冷静で論理的な判断、そして状況を俯瞰できる思考力が求められます。

だからこそユーロでは、プロになるためにも、また選手自身が成長し続けるためにも、「冷静で戦略的な思考に耐えうる心理状態の育成」を極めて重要な要素と位置づけ、日々のトレーニングに組み込んでいます。




Physical strength and part of good health

ユーロフットボールアカデミーでは、フィジカル面のトレーニングにおいても「感覚」ではなく、科学的なアプローチに基づいた育成を徹底しています。 学年や発達段階に応じてGPSや加速度センサーを活用し、走行距離・スプリント数・負荷の分布などを客観的に可視化したうえで、個別に最適化されたトレーニングを設計します。

たとえば、試合中に走行距離が10kmを超えるような状況においても、受傷せずにパフォーマンスを維持するためには、「回復力(リカバリー能力)」とその「持続時間」を高めることが不可欠です。これは単にスタミナをつけるという話ではなく、身体のエネルギーシステムを的確に鍛える必要があることを意味しています。

また、筋力の強化や走行距離の増加が選手の自信につながる一方で、競技特性や年齢特性を無視したトレーニングは、成長期におけるオーバーユース(過剰使用)や成長軟骨の損傷といった深刻な怪我の原因にもなりかねません。 そのためユーロでは、「高校生と互角に戦えるエネルギーシステムを構築しつつも、怪我をしない負荷のコントロール」を重要視しています。

実際、試合中にスプリント数が過剰になったり、インテンシティ(運動強度)が一定値を超えた場合には、「判断力の低下」と捉え、単なる根性ではなく思考と体力のリンクが切れていないかという観点から指導が入ります。

さらに、選手の将来を見据える上でも、「受傷歴」は非常に重要な評価指標です。どんなプロクラブであっても、怪我の多い選手と契約したいとは考えません。だからこそ、育成年代の今だからこそ、「競技特性に合った安全な身体の使い方」「再現性ある動作」「計画的な回復」を学ぶ必要があります。

トレーニングとは、言い換えれば身体に対する「計画的な破壊」であり、トレーニング後の身体には目に見えないダメージが多く残ります。そのためユーロでは、「休息=何もしない」ではなく、アクティブリカバリーや睡眠、栄養補給なども含めたリカバリー能力の育成にも重点を置いています。